大喜利三昧

もうちょっと大喜利を楽しむブログ。

大喜利のお題の作り方

大喜利にとってお題は大切なものです。なのに「大喜利 お題 作り方」で検索してもそれっぽいのが出てこなかったので作りました(実を言うとそれっぽいのは出てきましたが実践的ではありませんでした)。更新していくかもしれません。ちなみに、もうすでに「大喜利のお題の作り方が分かる」方向けではありませんので、そのへんはご了承ください。


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もくじ


・基本 抑えておきたいこと
分かりやすい文章を心がける
2つの相反するイメージを使う
足したり、引いたりする
お題の基本形
イメージしやすい「数量」について考える


・お題を作ってみる
<お題の作り方2種>
文章ねじり法
ドーナツマインドマップ
お題の作り方簡単バージョン
お題を拡張しよう


・作ったお題が不安なとき
【脇道】IPPONグランプリのお題と笑点のお題はここが違う


・お題作りに便利な言葉


・参考

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・基本 抑えておきたいこと
まず最初に、お題を作る際に注意していた方が良いと思われるポイントについていくつか紹介します。まず、お題の基本形を示します。


【お題の基本形】

「A(かつBであるもの)とはどのようなCか?」

このようになります。このCの例を挙げてゆく作業が基本的に大喜利と呼ばれます。A、またBは具体的な名詞であることもありますが、それぞれを分解していくと、それに付随するイメージや共通了解を取り出すことができます。Aについての「あるある」とBについての「あるある」が重なった地点にCとしての回答があると言ってもよいでしょう。なので、基本的にAとBには異なるイメージを持つもの、普段交わらないものを用います。


分かりやすい文章を心がける
一見当たり前のようなことですが、すごく難しいことでもあります。文章に巧拙があるように(読みやすい文章と読みにくい文章が存在しているように)、お題の文章が、どうも座りが悪いと、回答も振るわないということになりかねません。分かりにくいお題の一番の問題は、お題の取り違えが起こる事です。観客と回答者でお題の解釈が違うことは観客と回答者双方にとって不幸なことですので、なるべく避けましょう。


2つの異なるイメージを使う
「こんな学校は嫌だ」というお題があります。これには以下の解釈があります。

「こんな(ものがある)学校は嫌だ(という例を挙げてください)」
「こんな(状態にある)学校は嫌だ(という例を挙げてください)」

いずれにせよ、「学校は嫌なものではない」という前提のもとで、お題が成立しています。もし、実際に「学校は嫌なものである」としたら、わざわざ大喜利の回答で例を出してもらわなくても、すでに学校が嫌な状態にあるのですから、そのことには意味がなくなってしまいます。つまり、異なるイメージを持つ二つのものを用いれば大喜利をすることに意味があるということになります。


足したり、引いたり
笑いが緊張と緩和と言われて久しいですが、大喜利のお題においてはその中にギャップを作り出すとそれに対する回答がうまくいく可能性が高まります。お題にあらかじめギャップを仕込んでおくことの重要性は、大喜利に慣れていない人が大喜利をする時に特に実感されます。お題自体が「大喜利の回答になりやすい仕組み」を持っていることによって、大喜利に慣れていない人でも「大喜利の回答」を出すことができます。


お題自体にギャップを作り出す機能を仕込んでおくことで、それに素直に答えた場合でも回答にギャップが自然に含まれているようなお題が理想です。そのために、足したり、引いたりします。何を足したり引いたりするのかといえば、「量」です。大喜利においては、特に「見えないものの量」が重要であると考えます。濃度と言いかえても良いかもしれません。


「~い」で終わる形容詞のほとんどは、その量をイメージすることができます。たとえば、美しさを例に挙げてみます。美しさ100の人がいるとして、その量を10000に増やしてみます。もとの美しさ100の人に対してその美しさは100倍ですから、この人は「美しすぎる」と呼ばれるかもしれません。


このような見えないものの量を大喜利ではよく扱います。そしてギャップを作り出すためには、当たり前ですが2つの方法があります。足すか、引くかです。つまり、「度が過ぎている(量が多すぎる)」か、「まったくその要素がない(量が少なすぎる)」かです。異なるイメージを用いることと、さらにこの「見えないものの量」の多寡によって、大喜利はギャップを作り出すことに成功します。


大喜利においてイメージしやすい「数量」について考える

上で「ギャップを作り出すこと」という言葉が出てきましたが、ギャップとは、ある人が「AとBの間には相当の差がある」と認識できた程度の差です。つまり、差がこれ以上だったらギャップになるなという閾値が存在しています。閾値は二種類存在します。

A あらかじめ決められた上限を超える量、また下限を下回る量
B 間違いなく最高と分かる量、また最低と分かる量

この二つの量の違いは分かりにくいと思われるかもしれませんので、具体的に例を示します。

例お題:ケータイの電波が4本立った。どんなとき?

ケータイの電波は普通3本までしか立ちません(スマートフォンは別)。なのでこの場合のあらかじめ決められた上限は3本であり、このお題は閾値Aを使用しています。また、次のようなお題の例も考えられます。

例お題2:ケータイの電波が100本立った。どんなときか。

同じようにケータイの電波は普通3本までしか立ちませんから、ケータイの電波が100本立つことはあり得ません。このように、閾値Aは「閾値を超えているが、もしかしたら実現するかもしれないこと」を回答の条件として求めており、閾値Bは「閾値Aを大幅に超えており、まず間違いなく実現しないこと」を回答の条件として求めていることが分かります。

例お題3:ケータイの電波が5本立った。どんなときか。

このようなお題も考えられるかもしれませんが、これは悪いお題です。なぜかというと、閾値は2種類しかない、すなわち「実現可能性があるが実現していないもの」と「実現可能性がなく実現していないもの」の2つしか人間はイメージできませんので、そのどちらでもない「5本」という数量を採用すると、その2つよりも状況が限定されてしまいます。厳密に「5本立つときはどのようなときか」考えなければいけないということです。「ありえそう」か、「ありえない」かということです。

例お題:ケータイの電波が4本立った。どんなとき?
→ケータイの電波がいつもよりやけに良い。どんなとき?

例お題2:ケータイの電波が100本立った。どんなときか。
→ケータイの電波がありえないほどに良い。どんなとき?

閾値を満たしたお題はこのように言い換えることができます。量の基準がありますので、基準があることを前提にしていない量をお題内に採用してしまうと、その特別な量を採用した特別の理由を回答しなければならず、回答が難しくなります。

ここから、例お題2のような場合はきりのいい数字を採用することが多くなります。特別に大きな数を採用するのも良いですが、その大きな数に注意が集まらないようにしましょう。ふつう、お題は回答のパートナーであって、あくまで主役ではありません。


ちなみに、きりがいい数字を使わない場合があって、それは「アンケート」と「ランキング」をお題の材料として用いた場合です。例お題としては、「こんな上司は嫌だランキング第1位は「いつも怒っている」、では第32位は?」のようなものがそれです。
ランキングやアンケートは人為的なものなので、基本的に何位でもいいのですが、「100位は?」と聞かれるよりは「47位は?」と聞かれた方が、ランダム性や人間っぽさがあるので説得力があります。きりのいい数字であることに意味がないということです。


・お題を作ってみる
ここから、具体的にお題を作ってみます。お題を作る方法は2つあります。文章から作る方法と、単語から作る方法です。前者を「ねじれ文章法」、後者を「ドーナツマインドマップ法」と称します


1) ねじれ文章法
ねじれ文章法のやり方は簡単で、「一般的に正しいと思われる文章(AA)とその逆の意味を持つ文章(notAA)を用意し、それを組み合わせる」という方法で行います。文章は普通「Aして、Bした」のように二つの連続した行動を表したものを用いるか、「AがBした」のようなものを用います。例を示します。

まず、正しい文章を用意します。

正しい文章:「朝起きて、歯を磨いた。」

これは正しい文章です。次に、逆の文章を用意します。

逆の文章:「夜起きて、歯を磨かなかった。」

次のような逆の文章も考えられます。

逆の文章2:「朝寝て、歯を磨かなかった。」

正しい文章からは「朝起きて」「歯を磨いた」が得られます。

また、逆の文章からは「夜起きて」「歯を磨かなかった」が得られます。それぞれを組み合わせます。

「朝起きて、歯を磨かなかった。なぜ?」

「夜起きて、歯を磨いた。なぜ?」

 以上のお題が得られます。

不安な場合、ギャップを生み出せていないと感じる場合は、元となった正しい文章を説明してしまいます。「普通、朝起きると歯を磨きますが、朝起きて歯を磨かなかったのはなぜ?」という風に前提を説明してしまえば、取り違えが起こったりすることはありません。


2) ドーナツマインドマップ
2つ目はドーナツマインドマップ法です。この方法は、1つの単語から放射状にそれに対するイメージを書き出し(1段階目)、そこからはその逆のイメージを放射状に広げる(2段階目)ことによって、元の単語とこの「逆のイメージ」を組み合わせてお題とする方法です。実際にやってみます。

元の単語:「高校野球

元にする単語は、「あるある」が成立するようなもの、イメージがある程度共有されているようなものが適当です。「〇〇あるある」を考えてみて、4~5個思いつくことができたなら、それは元の単語として適当であると言えるでしょう。


1段階目:元の単語のイメージを膨らませる
高校野球あるある」を考えます。「さわやか」「坊主」「全力プレイ」「土で汚れる」「春夏」「チームプレイ」「涙」「感動」「マネージャーがかわいい」など、何でも良いので考えます。


2段階目:1段階目で膨らませたイメージの逆を考える
それぞれの逆を考えます。

「さわやか」⇔「ダーティー」
「坊主」⇔「長髪」
「全力プレイ」⇔「手抜き」
「土で汚れる」⇔「清潔」
「春夏」⇔「秋冬」
「チームプレイ」⇔「個人プレイ」

逆を考えるのが難しい場合は、1段階目に類するような概念を経由します。

「涙」→「熱血」⇔「冷血」
「涙」→「青春」⇔「老人」
「マネージャーがかわいい」→「マネージャーが可愛くない」⇔「マネージャーが男」

ここからお題として仕上げます。今回は、「清潔」を用います。

例お題:潔癖症の高校球児は甲子園でこんなプレイをする」

図にして示すとこのようになります。

f:id:hatumityan:20140607082839j:plain


3) お題の作り方簡単バージョン
上記2つの方法がめんどくさいという方へ、簡単バージョンを作りました。手順は、「〇〇って××そう」という文章を思い浮かべる→逆にする→完成になります。

手順1:決めつける
「ラッパーって悪そう」

手順2:逆にする

「ラッパーってやさしそう」

手順3:完成

「やさしそうなラッパーってどんなの?」

お題を拡張しよう

上述のように、大喜利のお題はギャップを生みやすくする必要があります。一番簡単な方法は、上記のいずれかの方法ないしその他の方法で作ったお題を、「一番」「最高の」「すぎる」などの言葉で修飾することです。


例お題:「潔癖症の高校球児は甲子園でこんなプレイをする」


ドーナツマインドマップ法で作成したお題です。すでに、「清潔」を「潔癖症」に言い換えています。正確には、「清潔すぎる」ことを「潔癖」としています。「一番」「最高の」「最強の」などの言葉は簡単にお題を作れますが、その状態を他の言葉で言い換えられないか考えてみるのもお題をスマートにする手かもしれません。


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・作ったお題が不安なとき
作ったお題が不安なときがあります。お題に対する悩みというのは、「こちらの題意が回答者に伝わるか」ということがほとんどですので、不安な場合は、説明してしまいましょう。どちらも大喜利を扱ったテレビ番組として有名なIPPONグランプリ笑点のお題の出し方の違いが参考になります。


【脇道】IPPONグランプリのお題と笑点のお題はここが違う
IPPONグランプリは、ダウンタウン松本人志をチェアマンとした、「競技大喜利」としては最も有名なテレビ番組です。そんなIPPONグランプリのお題の出し方ですが、基本的に、画面上にお題が文字として出るため、文字数は簡潔に抑えられる傾向があります。お題に関しての説明もお題発表と同時にはされず、その役割は舞台上ではなく別室の松本があくまで意見の一つとして担っています。

例お題:「牛乳は噛んで飲むといい」みたいなことを教えて下さいIPPONグランプリ第4回【開幕戦】)

一見普通のお題に見えますが、笑点のお題と比べると違いが分かります。

例お題:「「人の恋路を  邪魔する奴は  馬にけられて 死ねばいい」 こういう都々逸があります。今回は皆さん、 ”邪魔する奴は” これを活かして パロディ を作っていただきたい。」笑点大喜利BBS 2005年6月19日のお題)

IPPONグランプリの場合は、「みたいなこと」という言葉の中に、“「~いい」を活かして”ということも意味として含まれていますが、それをわざわざ説明することはしません。一方笑点のお題は、そこまで説明をします。どちらが良い悪いということはありません。IPPONはお題が文字として画面上に出るので、お題が文字ベースで考えられています。

そのために簡潔さの方が優先され、説明は省かれます。笑点のお題は基本的に口で伝えることをベースにしているので、お題というよりも「これから行うことの説明」といった趣の方が強くなります。視聴年齢層を考えたお題の出し方の変化と言えます。


お題が文字でいつでも確認できる場合は、基本的にIPPONグランプリの出し方で良いと思われますが、題意が伝わりにくい可能性があると判断した場合は、笑点風の出し方も考慮する必要があるでしょう。もちろん、笑点のように説明し、IPPONのようにお題を出題するということができれば、題意が伝わらないということはなくなるでしょう。


同じお題をIPPON風と笑点風に出題すると、このようになります。

IPPON風の出題:

「(アイドルしか住んでいない、)アイドル国の三大義務を教えて下さい」

笑点風の出題:

「国民の三大義務は教育・労働・納税ですが、アイドルしか住んでいないというアイドル国にも、三大義務があるといいます。そこで、そのアイドル国の三大義務を教えて下さい」

 または、

笑点風の出題2:

「みなさんは旅人です。私が今から、「どちらからきなさった?」と聞くので、どこの国から来たのか答えてください。次に私が、「その国は知らないなあ~、どんな国ですか」と聞くので、そこでまた一言答えてください」

 となります。


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・お題作りに便利な言葉
ここからは、基本以外に良く使われる、また、基本に基づいて作成したお題に肉づけをする、「大喜利のお題作りに便利であると思われる言葉」を列書していきます。お題のパターンと言っても良いです。ここは更新していくと思います。

「(ありえない前提)あるある」
「都々逸」
「~して一言・~で一言」
「手順・レシピ・やりかた」
「アドバイス」
「歌いだし」
「書き出し」
「俳句」
「川柳」
「何の略?(あいうえお作文)」
「替え歌・~のリズムで」
「~の決勝戦の内容」
「~名人は~」
「~の最終回は~」
「ことわざ」
「対処法」
「一言」
「穴埋め」
「(ありえない前提の)悩み」
「この○○、なんか××だな・・・」
「新漢字」
「新四字熟語
「写真で一言」

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・参考

大喜利でお題を出す時とボケる時のコツ - テレビ番組なるほどブログ

2ch板対抗大喜利まとめwiki - 出題者用お題テンプレ

http://www.ntv.co.jp/sho-ten/01_oogiri/past_04.html笑点大喜利BBS)

IPPONグランプリのお題一覧